最近、天体望遠鏡が欲しくてたまらないほしの恭世です。
今週迎える射手座満月の記事を書いていたのですが。どうしてもすべて書ききれないことがあったので別記事を書くことにしました。
新しい金星のサイクルが始まることについて、金星逆行の記事でいつか記事にしたい!と言っていたのですが、今回書いてみることにしました。
星のサイクルとは?
太陽と月が新月、上弦の月、満月、下弦の月…とサイクルを持っているように、それぞれの星には、一定の角度を持ったサイクルというものが存在します。
Life with the Moonでルネーションサイクル(月相)についての記事をいくつかにわけて書いていて、「わたしだけのムーンガイド」でも基本性質の中に生まれたときの月相での性質をお届けしているのですが、太陽と月だけではなく、他の天体にも、このサイクルがあります。
例えば、2020年に起こるグレートコンジャンクションは、木星と土星が重なるというひとつのサイクル。
グレートコンジャンクションの時期に生まれた方は、この木星と土星が0度、90度、180度など、太陽と月のサイクルのように一定の角度を取る時に何らかの節目を迎える方が多いのです。
実際、グレートコンジャンクションの影響についての鑑定をお願いされる方は、土星と木星のサイクルを持ってらっしゃる方が多いです(もともと占星術に興味があって、ご存なのかもしれませんが…)。
金星の満ち欠けのしくみ
本題に入りますと…。
2020年6月4日02:43に、現在逆行中の金星と太陽がぴったりと重なります(内合)。
これを天文学的に説明すると、太陽と地球の間に逆行中の金星が入り、一直線に並んでいるということになります。
わたしはたとえ占星術であっても、天文学的な知識も必要だと思っていて(古代は結びつきが強かったわけですし)、自分で理解できるまで調べるようにしています。その理由から、ここでも説明していますが興味のない方は読み飛ばしてくださいね。
金星には外合もありまして、こちらは金星と地球の間に太陽が入って一直線に並んでいる状態のことを言います。
図を描いてみました。
上の図の内合の部分。これが太陽、金星、地球と一直線に並ぶときで、外合の場合は、金星、太陽、地球と並びます。
金星は内惑星ですから、太陽と地球の内側を地球よりも速い周期で回っています。
内合するときは、太陽と地球の間に金星があり、太陽と近い南の空にあるため、観測ができず、外合するときは、太陽の向こう側にあるため見えません(実際は小さく見えるのかもしれませんが…)。
わたしたちが肉眼で空で輝く金星を観測できるのは、太陽が沈んだ後の宵の明星か、太陽が昇る前に見える明けの明星です(上の右図)。
かつてあった明星という昭和のアイドル雑誌は、明るく輝く金星のことを言っていたのです!金星って、趣味や芸術、エンターテイメント、恋愛など、ワクワクする楽しいことを表しますよね。なくても生きられるけどないと楽しくないもの。アイドル雑誌の名前にぴったりだなと関心してしまいました。
上の左図、内合と外合の間にある左側3つの金星は明けの明星で、左図の右側の金星3つが宵の明星となります。
金星のサイクルの中で、金星が地平線の下に沈み、地球から見えなくなる期間があります。見えなくなる前と後の観測できる金星が明けの明星または宵の明星となるわけですが、この空から姿を消す金星と関わりの深い神話があります。
占星術や天文学はさまざまな神話と結びついていますが、この金星の満ち欠けについての神話に関わりが深いのがイナンナの神話です。
金星の神話「イナンナの冥界下り」
イナンナはシュメール語で金星のこと。愛や美、戦い、豊穣の女神のことを言います。またの名をイシュタル(シュメールの次の時代に呼ばれていた名)。
その後のギリシャ神話では、アフロディーテーとなり、次のローマ神話ではヴィーナスとなり、それが聖母マリアにもつながってくるという女神の祖先なのです。
イナンナの神話については、wikipediaにもありますが、わたしがおすすめしたいのは、能楽師のワキ方として活躍されていて甲骨文字の研究者でもある安田登さんの「イナンナの冥界下り」という本です。
ご自身が演じるための準備としてこの神話を掘り下げていかれるのですが、神話の解説だけではなく、心というもののこと、女性の時代のことなどにも触れられていて、神話の意味するところを理解するのにとても良い本です。
こちらの本から、さらに要約し、ざっくりとこの神話のあらすじを紹介させていただきますね。
天と地を統治していたイナンナは、司祭としての地位や神殿を捨て、7つの神力を身に着けて生きては帰れないと言われる冥界へと向かう。
冥界の女王であるエレシュキガル(イナンナの姉)は、7つの門をすべて閉め、イナンナに開けさせ、門を開けるごとに神力を引き剥がすよう命じる。
7つの門をくぐり抜けたイナンナは、エレキシュガルと7人の裁判官の「死の眼差し」で打ちひしがれた肉になる。
戻ってこないイナンナを助けるため、イナンナの国の大臣ニンシュブルが神々のところへ行き助けを求めるが協力を得られなかった。
最後に訪ねた大神エンキは、自分の爪から2体の精霊を作り「生命の植物」と「生命の水」を与え、イナンナの体は蘇る。
地上へ帰ろうとしたイナンナはここから出ていくには身代わりが必要だと言われ、身代わりを探しているとイナンナの夫であるドゥムジがイナンナの不在を悲しみもせず、立派な衣服に身を包み玉座に腰をかけていた。
それを見たイナンナは「死の眼差し」見て「激しい怒りのことば」を発した。
ドゥムジはイナンナの兄、太陽神ウトゥに助けを求め、蛇にされ逃げようとするも、エレシュキガルに遣わされた悪霊たちに見つけられ冥界へ連れ去れられる。
イナンナは冥界より帰還する。
イナンナの神話と金星の満ち欠けの関係
金星が地平線の下に沈み、見えなくなるときは、金星が冥界へ行っているということを表しています。
ではこの神話を金星の満ち欠けに当てはめてみましょう。
- イナンナは天と地の統治領域を拡大しようと、冥界へ行くことを決め冥界へ行く。
→空に見えていた金星が地平線の下へと消えていく:宵の明星が見えなくなる - 冥界の女神エレシュキガルに7つの神力を奪われ「死の眼差し」で殺されてしまう
- エンキから与えられた「生命の植物」と「生命の水」でイナンナが蘇る(冥界の中で)
→金星と太陽が内合(空では見えない)し、新しく金星が生まれ変わる - 身代わりを冥界へ送り、イナンナが再び地上へ帰って来る
→見えていなかった金星が再び見えるようになる:明けの明星として昇ってくる
イナンナは生まれ変わる前と後で、2つの女神としての性質(明けの明星と宵の明星)を持っているのです。
明けの明星と宵の明星の性質の違い
わたしたちの出生図の中にある金星は、明けの明星なのか宵の明星なのか?を知りたくはありませんか。
それは、出生図の中の太陽と金星の位置関係でわかります。
- 金星が太陽より前にある方:明けの明星生まれ
- 金星が太陽より後ろにある方:宵の明星生まれ
例えば、双子座生まれで、太陽が双子座の15度にあったとします。金星が双子座の10度にあったら、あなたは明けの明星の金星の生まれとなります。
もし、太陽が双子座の15度で金星が双子座の20度だったら、宵の明星生まれとなります。
通常、ネイタルチャート(出生図)の中にある金星のサインで、自分の中にある女性性であったり、女性であれば恋愛の傾向を、男性であれば女性のタイプを読んだりします(わたしはこの読み方も人によって、また時代によって違ってくるかなと思っていますが…)。
この金星のサイクルを研究されているArielle Guttmanmさんは、著書の中で、明けの明星生まれなのか、宵の明星生まれかで、ネイタルチャート(出生図)の中の金星とは違った「内側にある愛の原則・原動力」のようなものがわかると記しています。
以下に、Arielle Guttmanmさんが提唱されている2つの金星の違いをご紹介しますね。
明けの明星生まれの方(Morning Star):戦いの女神
物質的なものや肉体感覚を大切にし、自分で感じたこと、自然界などで起こることを信頼する。技術的な法則や物質的なものがどのように作用するも理解している。スキルや才能を開発し持続していくことがあなたの原動力となる。自己完結するタイプなのでパートナーを必要としない傾向がある。交友、性的なつながりや種の繁殖のためにパートナーを求める。
宵の明星生まれの方(Evening Star):愛の女神
物質世界から遠く離れ、人生を通してまるで空の上を飛んでいるよう。豊かな想像力を持ち、魅力的で異世界的な視点を持っている。パートナーシップを築くことは難しくなく、そのパートナーは師や神聖なものとして現れる。人生を完全なものにするために、パートナーシップが重要となる。
ギリシャ神話では、官能的な喜びの女神とされるアフロディーテー・パンデモス(アフロディーテーの別名です)と、天国のアフロディーテーと言われるアフロディーテー・ウラニアという2つの女神がいます。パンデモスは戦いの女神であり、ウラニアは愛の女神に通じます。
また、マヤ文明の神話でも明けの明星を戦いの女神、宵の明星を愛の女神としているそうです。
占星術を学んでらっしゃる方は、この2つの金星の違いを読んで気づくことがあるのではないかと思います。
この2つの違いは、牡牛座と天秤座の金星の性質の違いによく似ているのです。
2つの金星の違い
牡牛座の金星は、自分が生きていくための糧を得ようとします。つまり、自分のこだわりや価値観、肌感覚を大切にし、自分の才能を磨き、自分で納得の行くものだけを楽しみます。
天秤座の金星は、対象との関係性を大切にし、他者の愛と調和を重んじ美しいものを大切にします。能動的な牡牛座に対し、天秤座の金星は受動的でもあります。
Arielle Guttmanmさんは、12サインの東側に位置するのが牡牛座で、西側に位置するのが天秤座なのも、明けの明星と宵の明星の違いにつながると記しています。
先に紹介したイナンナの冥界下りの話に戻すと、イナンナが他の領地を求め冥界へ下ろうとする宵の明星は、足りないものを求める天秤座の金星に通じるものがあり、再び地上へ帰るため身代わりを探す姿(明けの明星)は生きていくためにサバイヴする牡牛座の金星に通じますよね。
ではここで、先程の安田登さんの本にイナンナの性格がとても複雑で強いと紹介されていました。非常に興味深いものでしたのでご紹介したいと思います。
- 豊穣の神
- 玉座を与える神
- 戦いの神
- 性愛の神
- 神殿娼婦(神殿娼夫を従えることもある)
- 司祭
- 歌い手、詩人
- 放浪者
このイナンナの性格の中に、宵の明星のときのイナンナ(愛の女神)と、明けの明星のときのイナンナ(戦いの女神)の違いがあるとわたしは感じました。
わたしたちが単純に思い描く金星の姿とは違う面がありますが、「愛」というものにはいろいろな形があります。人を愛し、愛されるのも愛であれば、何かを守るために戦うのも愛です。
そして「愛」がネガティブに歪んでしまえば、それが嫉妬となり、暴力となり、支配へとつながっていきます。愛に執着するがゆえの不安も生まれます。
金星の持つ愛の二面性をわたしたちは知っておく必要がありますね。
また、自分を愛すことができなければ人に愛を与えることができません。ここに明けの明星の学びがあり、そして、他者に染まるのではなく他者を他者としてそのまま愛すことが、愛を与え愛を共有する宵の明星の学びになります。
新しい金星のサイクルを迎え、やるべきこと
2020年6月4日に新しく金星が生まれ変わり(内合)、明けの明星として明け方の空に姿を表すのは、6月の中旬頃だそうです。
「イナンナの神話と金星の満ち欠けの関係」で述べたとおり、内合はイナンナが生まれ変わる日ですから、これから新しく戦いの女神として、どういう価値観を持って新しいサイクルをスタートさせるかを考えてみてくださいね。
イナンナが神力や衣服までも手放したように、古い価値観を脱ぎ捨て、新しい価値観のサイクルをスタートさせましょう!
2020年の金星逆行の記事でお伝えした見直すことは、こんな感じ。これをみて不要なものを脱ぎ捨ててくださいね。
- 自分のリソースと豊かさの見直しと再認識
- 自分の感覚を感じ、再設定する
- 自分の中の女性性へのコミットメントと見直し(男性でも女性でも)
- 自分と身の回りのものの価値の見直し
- 自分の価値観の見直しと再認識・再設定(自尊心を持つこと)
- 自分の才能についての見直し・再認識
- ものごととの関係性の見直し・再認識・改善
- 恋人や愛する人、友人との関係の見直し
- パートナーシップ(仕事などでのパートナーシップ含む)の見直し
- 金銭関係(浪費傾向、トラブルの発生など)の見直し・改善
- 過去の未精算のできごとの見直しと精算
2020年の金星の逆行については、下のリンクを参照してくださいね。
さいごに…
今回紹介した金星の性質(明けの明星と宵の明星、牡牛座の金星と天秤座の金星)は、どちらが良くてどちらが悪いというものではありません。
余談ですが、わたし自身は天秤座の金星を持っていますが、牡牛座の金星を持つ先生から「天秤座の金星はもっともっとと欲しがるけど、牡牛座の金星は自分がコレ!というものじゃないとダメ」と言われ、「牡牛座の金星のようなことをできるようになった方がいい」と言われて、自分なりに金星を活かせている自覚があったので、しばらく落ち込んだことがあります。
占星術の学びを深めていくうちに、その発言自体が、実に牡牛座の金星的な発言だという理解ができたので、今はなんとも思っていません。少し意識しておくと良いよという意味で言われたのかもしれませんが、そこにあるのは、質の違いであり良い悪いではありませんからね。
ですから、この記事を読んで、良いor悪いという判断をしないでくださいね。
いま、自分軸で生きることが大切だとあちこちで言われていますし、これからの風の時代はたしかに大切な要素でもあります。
ですが、だからといって、何がダメでこっちが良いなんてことはないはずです。風の時代は、それぞれの個を認めてつながる愛の時代になりますから。
今回、神話の話で安田登さんの本を紹介しました。安田さんの本は、こちら↓もかなりおすすめの本です(好きなので熱が入ります。笑)。
これもこれからの時代、必要になってくる考え方だと思います。気になる方はぜひ読んでみてくださいね。
5年前に買ったものなので、Amazonでは中古しかないみたいですが、出版社のミシマ社さん(これまた大好きな出版社さんです)にあるかもしれません。
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